任意後見制度とは、まだ十分な判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合に備えて、自分が信頼できる人をあらかじめ任意後見人となる人として決めておく制度です。
任意後見人にどのようなことを任せるのかについても、あらかじめ契約で決めておきます。
例えば、
・預貯金などの財産管理
・生活費や施設費などの支払い
・介護サービスに関する契約
・老人ホームなどへの入所契約
・医療費や公共料金などの支払い
・行政機関への各種手続き
などについて、本人に代わって行ってもらうことが考えられます。
任意後見契約は、法律で定められた方式による公正証書で締結する必要があります。
任意後見契約を結んだら、すぐに後見が始まるわけではありません
任意後見契約を締結しても、その時点ですぐに任意後見人が財産管理などを始めるわけではありません。
本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から任意後見契約の効力が生じます。
つまり、
元気なうちに契約しておき、必要になったときに任意後見を開始する
という仕組みです。
2026年には、成年後見制度とあわせて任意後見制度についても改正法が成立・公布されています。
ただし、2026年9月現在はまだ施行前ですので、現在はこれまでどおり、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から任意後見契約の効力が生じます。
改正後は、現在の「任意後見監督人の選任」を起点とする仕組みから、家庭裁判所による**「任意後見開始の審判」**によって開始する仕組みに変わります。
また、一定の場合には任意後見監督人を選任しないことができる制度や、任意後見と法定の補助制度を併用できる仕組みなども設けられます。
今回の改正内容については、ブログで詳しく解説しています。
→「2026年改正で任意後見はどう変わる?監督人・補助との関係を解説」
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」があります。
本人に十分な判断能力があるうちに、
・誰に任せるのか
・どのようなことを任せるのか
を本人自身が決めて契約します。
すでに判断能力が低下している場合に、家庭裁判所へ申立てを行い、家庭裁判所が成年後見人等を選任します。
任意後見の大きな特徴は、将来のことを自分で考え、自分の意思で準備できることにあります。
現在は元気でも、将来認知症などによって自分で財産管理や契約ができなくなることがあります。
特に一人暮らしの方にとって、将来誰に手続きを任せるのかをあらかじめ考えておくことには意味があります。
将来は子どもや信頼できる親族に財産管理などを任せたい場合、元気なうちに任意後見契約を結んでおく方法があります。
親族だけでなく、司法書士などの専門職を任意後見受任者とすることもできます。
「身近に頼める人がいない」という場合にも、将来への備えとして検討することができます。
誰に何を任せるのかについて、自分で判断できるうちに準備しておきたいという方にも任意後見制度があります。
任意後見だけでは、元気なうちの財産管理はできません
ここは任意後見を考えるうえで、とても重要です。
任意後見契約は、原則として判断能力が低下し、家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されてから効力が生じます。
そのため、
「今は判断能力には問題ないけれど、銀行や役所へ行くのが難しくなってきた」
「高齢になったので、今から少しずつ財産管理を手伝ってほしい」
という場合には、任意後見契約だけでは対応できません。
そのような場合には、
財産管理等委任契約+任意後見契約
という組み合わせを検討することがあります。
任意後見契約を締結してから実際に任意後見が始まるまで、何年も経過することがあります。
そこで、定期的に連絡や面談を行い、
・生活状況に変化がないか
・判断能力に変化がないか
・困っていることがないか
などを確認する見守り契約を任意後見契約と組み合わせる方法もあります。
本人の状態の変化を把握することで、必要になった時期に任意後見監督人の選任申立てを検討しやすくなります。
任意後見契約は、本人が亡くなった後の手続きを行うための契約ではありません。
亡くなった後には、
・葬儀や火葬
・病院や施設の精算
・公共料金等の解約
・住居の明渡し
・家財の処分
・各種サービスの解約
など、さまざまな手続きが必要になることがあります。
これらについて生前に準備しておく方法が死後事務委任契約です。
特に、おひとりさまや身近に頼れる親族がいない方の場合、
見守り契約
↓
財産管理等委任契約
↓
任意後見契約
↓
死後事務委任契約
という形で、元気なときから亡くなった後までを一体として準備することも考えられます。
任意後見契約では、亡くなった後の財産の相続先を決めることはできません。
「自宅を誰に相続させたい」
「お世話になった人に財産を渡したい」
「相続人同士で争いにならないようにしたい」
といった希望がある場合には、任意後見とは別に遺言書を作成しておくことを検討します。
任意後見、死後事務、遺言はそれぞれ役割が異なります。
大切なのは、必要のない契約まで増やすことではなく、ご本人の家族関係・財産・生活状況・希望に応じて必要なものを組み合わせることです。
現在の生活状況、家族関係、財産の状況、将来どのようなことが心配なのかをお聞きします。
誰を任意後見受任者とするのか、どのような事務を任せるのかを検討します。
必要に応じて、見守り契約、財産管理等委任契約、死後事務委任契約、遺言書などについても一緒に整理します。
任意後見契約は公正証書によって締結する必要があります。
契約内容を整理し、公証役場との調整を行います。
公証人によって任意後見契約公正証書を作成します。
任意後見契約の内容は登記されます。
家庭裁判所へ任意後見監督人選任の申立てを行います。
家庭裁判所によって任意後見監督人が選任されると、任意後見契約の効力が生じ、任意後見人による事務が開始します。
任意後見契約は、判断能力が大きく低下してから準備する制度ではありません。
自分で判断できる今のうちに、将来誰に何を任せたいのかを考えておく制度です。
「まだ必要ない」と思っている時期だからこそ、ご自身の希望を十分に反映させながら考えることができます。
もちろん、相談したからといって必ず任意後見契約を結ばなければならないわけではありません。
お話を伺った結果、
「今のところ任意後見契約までは必要ない」
「まずは遺言だけ準備すればよい」
「見守り契約から考えた方がよい」
という場合もあります。
松岡司法書士事務所では、芦屋市を中心に、西宮市・神戸市東灘区などへ出張してご相談をお受けしています。
任意後見だけでなく、
・見守り契約
・財産管理等委任契約
・死後事務委任契約
・遺言書作成
・相続手続き
などを含めて、将来必要になる手続きを整理するお手伝いをしています。
「自分の場合は任意後見が必要なのか分からない」
という段階からでもご相談いただけます。
まず現在のお悩みを整理したうえで、必要な備えを一緒に考えていきます。
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