相続人申告登記とは、
① 登記簿上の所有者について相続が開始したこと
② 自分がその所有者の相続人であること
を法務局の登記官に申し出る制度です。
相続登記の申請義務の期限内にこの申出を行うと、申出をした相続人については、相続登記の申請義務を履行したものとみなされます。
申出を受けた登記官は審査を行い、申出をした相続人の氏名・住所などを登記簿に付記します。
相続人申告登記は、相続登記義務化と同じ2024年4月1日から始まった制度です。
・相続人間で遺産分割協議がまとまらない
・相続人の人数が多い
・相続人の一部と連絡が取れない
・誰が不動産を取得するのか決まっていない
・相続登記の期限が迫っている
・昔の相続で、2027年3月31日の期限が近づいている
・通常の相続登記を期限内に行うことが難しい
相続人申告登記は、こうした場合に相続登記の申請義務を履行するための選択肢となります。
通常の法定相続分による相続登記を行う場合には、法定相続人の範囲や法定相続分を確認する必要があります。
そのため、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍など、多数の書類が必要になることがあります。
一方、相続人申告登記では、申出をする人自身が亡くなった方の相続人であることを確認できれば足りるため、通常の相続登記と比べて必要書類を少なくできる場合があります。
また、相続人が複数いる場合でも、各相続人が単独で申し出ることができます。
一人の相続人が、他の相続人から委任を受けてまとめて申し出ることも可能です。
相続人申告登記は、相続人全員が一緒に申し出る必要はありません。
例えば、相続人が長男・長女・次男の3人いる場合、長男だけが相続人申告登記を申し出るということもできます。
ただし、この場合に申請義務を履行したものと扱われるのは、原則として申出をした長男についてだけです。
長女や次男についても申請義務を履行するためには、それぞれについて申出をする必要があります。
そのため、誰について相続人申告登記を行うのかを確認しておく必要があります。
ここは特に重要です。
相続人申告登記をしたからといって、不動産の名義が相続人に変更されるわけではありません。
相続人申告登記では、
「登記名義人が死亡したこと」
「申出をした人がその相続人であること」などが登記簿に付記されます。
一方、通常の相続登記では、不動産を取得した相続人へ所有権の登記名義を変更します。
つまり、
相続人申告登記 = 相続登記義務に対応するための簡易な制度
通常の相続登記 = 不動産の名義を実際に相続人へ変更する手続き
という違いがあります。
相続人申告登記をした後も相続登記が必要になることがあります
相続人申告登記を行った後に遺産分割協議がまとまり、不動産を取得する相続人が決まった場合には、改めてその内容に基づく相続登記を行う必要があります。
遺産分割によって不動産を取得した相続人には、原則として遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容に基づく相続登記を申請する義務があります。
そのため、
相続人申告登記
↓
遺産分割協議
↓
通常の相続登記
という流れになることがあります。
相続人申告登記だけで相続手続きがすべて終了するわけではありません。
相続登記の義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続についても対象になります。
2024年4月1日以前から相続したことを知っていた不動産については、原則として2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
例えば、
「10年前に父が亡くなったが、まだ父名義のまま」
「祖父名義の土地が残っている」
という場合も対象になることがあります。
期限までに通常の相続登記を行うことが難しい場合には、相続人申告登記を利用できるか検討します。